2004-01-01から1年間の記事一覧

恍惚と不安

外傷と恥の感情の話、第三回目ですが、ここでようようおしまいというかまとめへ。 ハイデガー以来存在からの呼びかけの側に位置づけられることになったこの感情。ラカンはそれをシーニュというふうに読み替えます。つまり、言語のもつ意味の流動性を固定させ…

覗き魔の見るもの

サルトルの覗き論、というのは周知のように、『存在と無』の中で論じられた主題です。見られていることすら気づかぬうちにみられていること。そのまなざしから引き起こされる諸々の感情をサルトルは論じたわけですが、ここでは恥。サルトルのテーマは見られ…

穴があったら・・・

中井久夫「徴候・記憶・外傷」、届いてからずいぶん経つのですがようやく目を通しました。相変わらず一つの資料から総論結論まで飛ぶの速いなあ、と思いつつも、まあその直感性が楽しいせんせいです。今回は一般向けの原稿発表が中心ということもあるのでし…

おひかえなすって

鮎を買い、枝付きの枝豆を買い、おまけに帰り道では(私にとってはですが)初蝉を聞き、と、どうも夏気分な一日です。さすがにビールは遠慮しましたが、もうすっかりおじさん気分。いや、実際おじさんですが。対照的にシェリングの著作をいくつか(というほどい…

出会い系哲学

今日も引き続き、九鬼周造の「偶然性について」から。でも今日はちょっとだけ。。。前回の話では、九鬼の偶然性についての分析をモチヴェートしたのが実存哲学との関係であったことを書きました。で、今回はもう一方の極、他者との出会い、という側面を足し…

九鬼周造の「偶然性について」

こうだらだら暑いと、生来の怠惰さがよりいっそう顕著になり、さらにいっそうだらだらと暮らしてしまう今日この頃。こうなると、あ、偶然、と思えるような瞬間はかけらもなく、毎日は鉄の必然性で進んでいきます。そんなわけで、今日は九鬼周造の「偶然性に…

回転レボルバー

新茶、蛍、初夏満載な今日この頃です。新茶、というには若干遅いといえば遅いのですが、ちょいと奮発してみました。新茶の香りは、柔らかい夏の空気の香り。よいものです。蛍はといえば、どうせイベント用に放されたものたちの残党なのだろうとは思いますが…

貧乏学生

今回は、久々に読書会の記録から。ラカンのセミネール第17巻、 LacanのL'Envers de la psychanalyse, p.170〜ですね大学のディスクールでは、エージェントとしての知が、他者としての対象aに話しかけます。対象aはなんでしょう?学生だ、とラカンはいいます…

このこどこのこ

日本の民俗学の創始者にして泰斗柳田国男先生の御説によると、親と子という言葉は、じつは親分子分の意味の方が先なのだ、ということです。(それにしても出典はどこだろう。探さなきゃ) まあ、原典を読んでいないのでせんせいがどのような家族形態を前提とし…

パンと見せ物を

20世紀の音楽、それはやはりロック、電気音楽・・・というふうに考えていくと、それはなにやら示唆的です。18世紀までの音楽が持っていた、共鳴音の豊かさ、倍音の豊かさ、そしてその共鳴を伝えあうことから、音楽はおおきく変遷します。強烈で反復的な振動…

モグラの伝言

ネットの世界では、いろいろなものが無料です。というか、無料でした、というべきでしょうか。 理由はいろいろあるのでしょうが、まあ、元々が学者さんのネットワークだから、というのは大きな事です。学者さんは自分の名前が出典として記載されてさえいれば…

愛は陽を受けて笑う小石

L'amour est un caillou riant dans le soleil (ラカン『エクリ』508ページ)誰の句なのか、知らないのです。一応ラカンの研究者なのに。。。 とはいえ今日はその話。 あまり行儀はよくないのですが、この陽気、泉川に足を浸してぼおっとしながら、ころころと…

こうもり傘とミシンと・・・

初夏の陽気を通り越して、もう夏の草いきれさえ感じさせる今日この頃です。さすがに朝夕はそれでもちょっと肌寒いような空気に思わず一日開けっ放しだった窓の存在に気づかされるわけですが。そんな昼と夜の出会う夕方の何時間かの風は実に素晴らしい、そん…

守護神?

五月も終わり。終わりとはいえ未だ五月。なのにこの異様な蒸し暑さは何でしょう。盆と正月が同時にやってきた、とは言いますが、正月の方は置き去りにしてお盆の方が先にやってきてしまったような暑さです。ご先祖様も間違えないか心配。さて、ヘーゲルを無…

なべとやかん

ジジェクのイラク論が発売になりました(http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4309243134/250-6508915-5686609)。翻訳のかたは先ほどのバディウの訳者であったような気がします。お仕事盛りでしょうか。日本先行発売(?)という話も以前出版社の広告で見…

うそからでたまこと

上手にうそをつくには、と聞かれたときは、いつも答えは同じ、うそをつかなければよいと答えることにしています。 人間不思議なもので、どんなことでも疑ってかかる慎重で賢明なひとでも、「自分が見抜いた」「自分だけが気づいた」...etcと思ってしまうと、…

ひとのうわさも

75日、とか申しますそうですが、インターネットのおかげかその75日の内実はかなり変わったかもしれませんね。すくなくともその盛り上がりの密度たるや相当なものです。問題はどんなふうに消えていくか、75日でフェードアウトするか、ということです。情報の…

君の名は

犬はあまり好きではありません。あの権威好きの動物は、どうも家の中でいちばん小さい子より一つ上の立場に身を置きたがるようで、家族の中でも、従兄弟をあわせた一族の中でもいちばん年下だった期間の長かったわたくしは、他の成員がほのぼのと戯れる中、…

ながめせしまに

今日も雨、というか、やたら雨の日に限って更新しているような気がします。 別に雨の日が特に閑とか、そういうこともないのですが、ぼんやりものを考えるのはながめせしまに、な折のほうがよいということかもしれません。 今日はここのところ相次いで邦訳が…

月は東に

月は東に 今日は雨。春雨。川沿いを傘さして歩いていると、中州を占領した菜の花が綺麗。回りの雑草の緑もまだ若いので、黄色とよく融けます。この時期は一日一日の移り変わりが激しくて、書くネタにも事欠きませんね。なににつられて出かけたというわけでも…

眠りの神

ってなんだっけ、としばしことしばし。またしてもグーグルのおせわになって、ああ、そうだ、ヒュプノスだ、ということに気づきます。催眠とか、結構専攻領域に頻出するはずじゃん、と、少し反省。 まあ、そんなことを考えるのも、春眠暁を、にしても度を超し…

美女の条件

今日はちょいと初仕事の場所に行って来たのですが、ビックリするぐらい良い天気でした。 名にし負う柳が綺麗。本当に、この時期のつかの間だけの美しさです。女性の美と一緒ですね、といったら怒られましたが。 でも、中国では柳眉柳腰ほか、柳と言えば美女…

くれなゐの

二尺伸びたる 薔薇の芽の 針やわらかに 春雨の降る正岡子規でしたね。これも子供のころの教科書だったような気がします。我ながらおそろしく文学に無知無勉強であることがよくわかりますね。そして、ガキがなんといおうと名作を子供のころから無理から詰め込…

血液型

先日友人と話をしていたときのこと、酒も入っていたせいでしょうか、話は流れ流れて血液型に。 わたしは全く無知なのですが、先日のあるある大辞典かなにかでも取り上げられた、とかいうことで、その手の話大好きっこな友人のハートに火がついたようです。。…

旬のもの

春の宵からこんな選曲もどうかと思いますが、なぜかふっとツィンマーマンのラフマニノフのコンチェルトを聴いていました。 各声部がこれだけクリアに聞こえるのはまれじゃないかな、というのと、低音の異様なまでの充実っぷりと、いろいろと聴き応えのあるい…

花冷え

一雨ごとに、と良く申しますが、昨日今日の雨はどうも一雨ごとに暖かくなる、というほうではありませんでした。まさに花冷え。花散らしの雨にならなかったのがせめてもの幸いです。 この夜の冷え込みようなら、思ったより桜、保つかもしれませんね。さて、今…

バグパイプ

まさに桜満開春全開の陽気ですが、我が家にはそんなまことにジャポネスクな季節とは少々場違いな闖入者が。 いや、べつにひとではありません。音です。バグパイプ。去年の秋口あたりから、でしょうか、あるいはもうちょっと前からだったでしょうか。謎のイン…

梨咲くと

葛飾の野は との曇りだれの俳句だろうということはどうしても思い出せなかったのですが、水原秋櫻子らしいですね。グーグル偉大です、ありがとう(その偉大さ故のいろいろ問題もあるらしいけど)。 梨の花の満開の中、小雪の舞う中生まれてきた、らしい姉の…

さくら

日中はすっかり春の陽気ですが、風の中にわずかにのこる冬の名残を警戒して、一枚余分に羽織っていったものの、それでもやはり夜桜には少々肌寒い晩でした。さて、今回はデカルトのコギトに関して。なにやら壮大ですね。いわゆる、フーコーvsデリダのコギト…

春雨

いざ書こうと思うと案外公開に耐えるような文章は思いつかないもので、ふんぎりのつかないままずるずるとここまで来ました。 基本的には読書雑記を備忘録的につけつつ、読書会等で読んだ文献に関してはある程度のまとめや討議のたたき台になれば、という以上…