2005-01-01から1年間の記事一覧

吉野家的暴力

フーコー先生は正確に生-政治の権力の快楽、あるいはラカン的にいえば享楽の問題を指摘していましたし、また次に見られるように、それが資本主義の組み込みに不可欠であることも触れていました。 「このようなは、疑う余地もなく、資本主義の発達に不可欠の…

寄生的資本主義

さて、前回はフーコーの生-政治という概念について、中毒と専売制という観点が見られないような気がする、と噛みついてみたのでした。今回はそのあわただしい解説と現代的意義を、あるかどうかは別として一応。。。 そして、研究の主潮が、どうも「国家や資…

調味料ドラッグ

ニポンノミナサン、ヒサシブリデーッス、ニネンブリーノ、ライニチデェース!!! (タモリ風に) というのはまあどうでもいいのですが、約3ヶ月ほど間が空いてしまいました。人生珍しく、この間怒濤の〆切ラッシュを5つも6つも抱えて四苦八苦していたのですが…

情報なき生命

さて、ちょっと前、とある社会情報学系のシンポジウムに顔を出していたときのこと、「情報一元論」をもとに壮大な理論構築を進めている某先生もシンポジストとしてご出席なさっておられました。 まあもちろん、シンポジウムというのはそんな理論的な話をする…

知的貯金の民営化

さて、前回は知的所有権?知的財産?というはなしを、知の原初的蓄積から資本への転化、という文脈で考えてみました。 デカルトのくだんのコギトで問題なのは、実は表象の産出権、というところにあるのだろうなあ、そしてデリダとフーコーの(あの良くわから…

よ〜くかんがえよ〜

おかねはだいじだよ〜というあのCM(そういえばずいぶん長いシリーズになりましたね)を見るたびに、筋金入りのうえに斜交いと補強材入り(リフォームの匠の技でやってた)の貧乏人のわたくしといたしましては"Don't think, feel..."と思ってしまいます。考え…

déshabillez-vous!

前回からの流れでいいますと、人間存在の等価物がゴミ、ということになってしまったわけでした。 このことはわれわれの日常とさほど遠いものではありません。基本的に、消費社会というのはゴミを作ってゴミを売り、そしてゴミを捨てるものです。最近ではリサ…

ゴミ存在論

ラカンせんせいが案外ゴミ好きであったという話は、一部では有名です(いや、ちょっとうそかも)。 とはいえ、例えば対象aと呼ばれる重要概念を担うものの一つは糞便です。これ、一部のマニア以外にとっては、たぶんゴミでしょう。だとするなら、なるほどわれ…

自主性の尊重

前回は、幻想の搾取、という話をしてみました。それがわれわれの隣人愛の形態である、と。そこにあるのは「奴の幻想を暴き立ててそれを享楽しよう」というメカニズムです。その際の決め文句はある意味自発性・自己責任。深層演技者の側も、また客の側も、互…

ハラスメント的連帯?

さて、前回は、十戒の第十番目、隣人の妻、奴隷、家畜等々を欲しがってはいけない、という掟についてのラカンのコメントで終わったのでした。この掟は、少なくとも隣人の妻に関して毎日この掟を犯している男の心の中に常に生きています、という、これまた身…

お客様目線なセクハラ

さて、前回は「感情労働」というのは同時に客の側の感情の搾取から成り立っているのではないかしら、と論じてきました。まあ若干短絡的という気もしないでもないので、話を労働者側の感情に戻しましょう。 ですが、たとえばより一般的に例えばケア労働、など…

恋人気分

さて、前回前々回と隣人愛にまつわる精神分析的小ネタを長々としてきたわけですが、それにはそれで理由があります。 先日U君が興奮して言うやうには、「アメリカ人もスチュワーデスに萌えるんですかね」すっちーはしらんけど婦人警官ものの洋物は見たことが…

迷惑な隣人

前回は、「隣人愛」の話から始まって、ラカン的な愛憎L'hainamorationの話へと展開してみました。 ですから、われわれはいつでも、この愛憎の表裏一体のなかで、その愛憎の対象の中に、真に愛している対象が存在しているのではないか、と考えることになりま…

汝自身の如く汝の隣人を愛せ

というのが、フロイト先生いたく気に入らなかったらしい、という話はよく知られています。 まあこれをもってして、うむ、精神分析は博愛の心を欠く近代のエゴイズム丸出しの・・・と難癖を付けてみても言い訳ですが、ラカンせんせいはこともあろうにこれを公…

愚か者よ

さて、今日はちょいと一発小ネタ。 前からちょくちょく、ラカンがファルスの享楽のことを、自慰的享楽、あるいは愚か者の享楽と書いている、ということはお話ししてきました。 うん、なんとなくわかるような気はするよね(実感)、とはいうものの、でもどうい…

ゴミを宝に

サントームの話が昔からちょっと好きでなかったのは、ラカンがちょいとばかりジョイスによっかかりすぎる、というところがあるからでしょう。そりゃ、ジョイスは天才だったさ。彼の作品が、想像的なものの脱落を補って象徴的なものと現実的なものを結んでい…

犯人はお前だ

コナン君でも金田一少年(古いか、と思っていたのですがまたドラマシリーズが始まるらしいのでむしろ新しいのかもしれない)でもいいのですが、探偵ものを見ているといつも思うのは「犯人はこの中にいる!」というアレ、いいのかな、ということです。 そりゃ推…

Lady-made?

さて、割と昔から(裏付け無しに)提唱していた、というかしようとしていた小ネタの一つに、既製品の男性性、オーダーメイドの女性性、というネタがあります。 そのインスピレーションの源になったのは、噂に聞く抜きキャバほかの男性向け性風俗のあまりの流れ…

虚無との調和?

さて、前回から引き続き、焼かれた手紙のお話。ラカンの『エクリ』所収の論文、「ジッドの青春、あるいは文字と欲望」と、それに関するミレールの分析を引き続きまとめてみましょう。 王女メディアをラカンが援用したのは私の知る限りでは一カ所、ジッドの青…

無意識における燃やされた手紙の審級

ラカンがジッドについていくつか述べていた(エクリやセミネール第五巻などなど)ということはよく知られています。知人がそれで論文を書いていることもあって、個人的にも比較的なじみのテーマではあるのですが、気になる点が一つだけ。 もちろん、丹念に書か…

ミクロウォーズ?

前回は、脳と身体と私、みたいな話から、ミクロ権力の話と最近の症状の意味、というところまで与太を吹いていたのでした。いちおう、まとめというかオチを付けておきましょう。 心理学化する社会、と、最近よく言われます。本来なら社会問題であるべきところ…

あなたと脳と身体と

ある日の研究会でのこと。 性同一性障害の患者さんをたくさん抱えていらっしゃる、若い精神科医さんの発表のあと、おきまりの質疑応答になりました。 こういうとき、答えがすぐに出ると期待されるであろう質問以外はそうそうするべきではない、ということは…

ピアノの奇行師

Left hand di difficulte entirely orchestren, Chopin It's model nice, better more melody, you know And then the last part de Godowsky de orchestre. なんの話だそもそもなんだそのチャンポン語は!と思われるかもしれませんが、わたくしにとっては年…

ドリル式無意識

前回から、キャシー・カルースの「トラウマ・物語・歴史 持ち主なき出来事」を見てきました。原題は"Unclaimed Experience"。その経験を自分のものとして主張するのなら、それは歴史的言語に、あるいは自分の権利として要求するなら法的言語に。訳者の下河辺…

クレイマー、クレイマー

「去年の学生がおぼえたのと同じ内容をどうして今年もおぼえなきゃならないんだ」 「それは去年の学生が完全にはおぼえなかったからじゃないか?」 「そうか・・・」 「そしてオレたちもおぼえきれないから来年の学生も・・・」 こうして横の連帯感と同時に…

無意識保険

「保険は言語のように無意識を構造化するだろうか」 ラカンのパロディで、時々考えることです。このブルンナーさんの論文にも出ていますが、たとえばしばしばPTSDの症状の一つとして紹介されるフラッシュバックはテレビ等々で本当に技術的な意味で使われる「…

脊髄震盪?

さて、前回は、前世紀半ば、鉄道事故の補償をめぐってトラウマという問題が浮上したのだ、というはなしをしました。もちろん事故が起きれば、そりゃ怪我もするし、神経系の損傷も起こすかもしれず、そしたらなにか身体症状が出てもおかしくはない。でも、そ…

鉄道

先日も痛ましい鉄道事故がありました。ふだんよく見知っている大学の、それもまだ若い学生さんも多かったということで、ひときわ心の痛む事故でした。亡くなられた方々には心からのおくやみを申し上げます。 同時に、生き残った方々の、いわゆる心のケア、と…

自分の死にすら気づくまい

子供の頃疑問に思っていたのに、結局解消することないまま大人になってしまった問題というのはいくつかあるものですが、わたくしにとってそのひとつは、漫才のオール巨人阪神さん、あれ、大男の巨人さんの半分くらいしかない小男だから阪神=半身だよね?とい…

最初のヴァーチャル人間

精神分析の経験はヒステリーからはじまりました。 と話を始めるのは、もうすっかり定番なのですが、まあ何度強調してもしすぎることはないでしょう。 簡単に言えばそれは、意識と身体の(ラカン風にいえば、肉と皮の)あいだに、もう一枚なにか違うレイヤーと…